第3章 『ピピ』にて

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この町に戻ってくるのは、大学を卒業して以来のことだった。 ほぼ十年の間、僕はこの町に来てはいない。 この町に来なかったのに、何か理由があったわけではない。 ただ、仕事などでなかなか時間がとれなかっただけだ。 たいして大きな町でもなく、何か特別なものがあるわけでもないが、僕はこの町が好きだ。 それはいろんな思い出が詰まっているせいかもしれないし、それ以外の理由もあるのかもしれない。 たとえ理由がどうであれ、もし時間さえとれていれば、僕はこの十年間で何度かはこの町に来ていたかもしれない。 いや、確実に来ていただろう。
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