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第5章 シュウのこと
『大洋』が終わった。
一瞬、『ピピ』の店中に静寂が流れる。
そしてまた次の曲が流れ始めた。
ロクは相変わらず俯いたまま黙っている。
彼の頭はまだ混乱しているようだった。
彼はどのように話せばいいのか、必死にもがいていた。
「シュウが消えたんだ」
ロクは呟くように言った。
「消えたというのは、失踪したということか? それだったら僕なんかに相談するよりも先に警察に行ったほうがいいんじゃないのか?」
「違う。一緒にいた俺の目の前で、消えてなくなったんだよ。パッと消えてなくったんだよ」
ロクは大きな声をあげた。
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