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序章 誕生
──再世歴508年 アルバーニ邸
古い街。背の低い建物ばかりが並ぶ丘の街だ。
大きな街路を丘の方へ登って行くと古風な佇まいの大きな屋敷がある。丘から眼下の街を一望できるこの屋敷の一室に生まれたばかりの赤子を抱きあげる、男がいた。
「まだ目は開かないけれど、きっと貴方と同じ赤い目をしているんでしょうね」
「……」
妻に話し掛けられてもアドルフ・アルバーニは抱いた赤子を黙って見つめていた。そんな事には意も介さずソフィア・アルバーニは夫に疑問を投げ掛けた。
「何も考えているの?」
「この子の、未来についてだ」
アドルフはようやく閉ざした口を開いた。
「この子の運命は戦いとともにある。それは何度も話し合ったことでしょう? どんな悲劇が待っていてもこの子を愛そうと。だから私は私の意志でこの子を産んだの」
決められた運命で無く私の意志で。と、そう言ったソフィアの亜麻[あま]色の瞳は確固とした決意に燃えていた。そこには女としてではなく母親としての強さがあった。
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