彼女の困惑

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「あ、そうそう田中、もし何か入れてほしいものがあれば早めに――」 ♪~~ 「あ、ちょっとごめん。」 携帯の着信音に反応して莉奈が携帯を開いた。 仕種から見るに、どうもメールらしい。 「誰から?」 「浮気相手から。」 「ええっ!?」 雄太に軽い冗談(多分)を言いつつ、莉奈がそれに返信しようとする。 カチャカチャ…… 莉奈が返信の為に文字を打つ度、星のストラップがカチャカチャと音を立てる。 あのストラップは雄太の携帯にもついていて、二人がデート記念にペアで買ったらしい。 「……どうした沙希?北原の携帯が何かおかしいか?」 「えっ?あ、うん。新しくていいなーって。あたしの結構古いからねー。」 連がいち早くあたしの視線に気付いて突っ込んできた。 「そうか?俺には携帯から少し外れた所に視線があったように見えたんだけどな。」 「そう?気のせいじゃない?」 「ま、本人が言うんだからそうだろうな。」 最近、連は全てを知っている上でこういうことをやたらと突っ込んでくる。 あたしへの嫌がらせなのか、それともただ単にあたしで遊んでいるのか、イマイチ真意が分からない。 連相手じゃどうあがこうと手の平の上で転がされるのがオチだろうし、刃向かうのは諦めたけど正直もう勘弁してほしい。 「ああ、そういえばそのストラップってお前達がデートした時に買ったんだったな。」 「え?あ、うん。これ凄い高くて俺もびっくりしたんだよね。」 ……マズい。 話の方向が嫌な方向に向いてきた。 「へぇ。あ、そうそう、お前達のデートの――」 「あ!ストラップといえば去年合格記念のストラップを皆で買ったよねー!」 あの連の微妙に口角が上がった顔は、完全にあたしを困らせるつもりだ。 なんとか話を反らさないと……! 「あー、買った買った!俺、まだあれ机に大事に――」 「そんな北原が入れないような話するなよ。それよりも、お前達のデートの話ってまだあんまり詳しく聞いてなかったよな。折角だし教えてくれよ。」 「え?あ、うん。」 「………。」 わかってた……勝てないこと位わかってたよ……!
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