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光の在る処と闇の在る処。
そして二つが混じる処を大いなる存在がそれぞれ三つに因って成る世界として分けてから悠久の時が流れた。
それぞれを縛り、また守る壁は厚く固く並大抵のことでは突き抜けられない。
光と闇が混じる世界に住む人間がどれだけ健気に文明を進歩させようと、彼らに許された能力の範囲では壁の向こうにある別世界を知覚することすら不可能だ。
故にけして触れ合うことはない。
壁を越えるには悪魔が用いる〝魔法〟か、もしくは天使の行う〝奇跡〟が必要になる。
どちらも人の身で扱うのは不可能だ。
そう、例えば地球上数十億の口から発せられる音が組み合わさることで魔法として力ある呪文を形作り、魔方陣を構成する奇跡でも起こらない限りは。
そして今その稀なる偶然が、一人の少年の身の上に起きようとしていた。
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