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立体ではあるが果たして物質なのかどうか質感が想像できないほどあやふやで現実感が無い。
その部分だけ空間が消え失せ、現実が剥がれ落ちた先に別の世界が見えているという風にさえ思えた。
そこを中心に暗がりが広がっている。
部屋が暗転しているのはどうやら太陽が輝くのと同じようにその人影が闇を発しているせいらしかった。
摩訶不思議な現象を前に立ち尽くし呆然と我を失っている間に人影は段々とはっきりした形を取った。
かなり若い、少女だった。
顔立ちは幼く中学生くらいに見える。
一目で人間でないとわかるのは天井から降りる紐も記録的な上昇気流も無く空中に浮かんでいることと、背中に節が浮いた蝙蝠のような翼を生やしているせいだ。
先の尖った細い尻尾まである。
しかしそれを除いた印象は人間と一致する。
髪は翼と同じように左右へ二つに分けて幼さを印象付ける大きな瞳は爛々と輝き正気の欠けた凄みを放ち、小さな唇は暗い愉悦に歪んでいる。
特撮ヒーローの女幹部のような黒光りする際どい衣裳は発育と不釣合いに過激だ。
「願え!」
唐突に、人外の少女は獣が吠えるようにして短く叫んだ。
それでようやく、見入り硬直していたと気付かされる。
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