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「我輩の名はリムザルミ・ロードロア。
数多の空の言の葉にて魔界より運ばれし者。
多く深くは要さぬ。
貴様の欲望を叶える者とだけ心得よ!」
いつの間にか部屋に昼間の明るさが戻り、代わりに赤いなにやら文字のようにも見える模様がぐるぐると床、壁、天井を這い回っていた。
その現象は目の前にいる人外の少女を中心にして起きている。
「さあ、願え!
欲望を吐け!
さすれば我輩は直ちにそれを叶えよう。
望むがいい欲するがいい浅ましき人間よ。
貴様が望めば貴様はこの世の王にすらなれる!」
高らかに誇らしげに語った人外の少女は見下ろすようにして胸を反らす。
浮いているとは言っても一回り二周り小さいので顔の高さは変わらない。
俺は肺一杯に溜めた空気で、転がり込んだ摩訶不思議に負けない強さを返した。
「帰れ!」
「フゥハハッ!
その程度、我の力を持ってすれば……
えー、なにそれー?」
一度笑った人外の少女は反っていた背を丸め眉を曲げると翼を小さく折りたたんだ。
壁で蠢く文字は消える。
「ちょっと、なんなの貴様。
困るってそんなの。
あ、高い所からごめんなさい」
ついには浮くのをやめ、弱気な顔をして降り立ったテーブルから更に降りる。
翼と衣裳に目を瞑れば、こうなるとそこらにいる女子中学生となんら変わりはない。
「願いを叶える代わりに対価を受け取らないといけないのに、先に我輩帰っちゃったら対価貰えないじゃない」
何が起きているのかわからないが、目の前にいるのは多分悪魔だろう。
突然現れて願い事を要求したことといい、今はすっかり消え去っている禍々しさといい、それ以外でこの状況と一致するものを思いつかないのは俺が馬鹿だからじゃないはずだ。
「いらん!
お断りだ!
帰れったら帰れ!」
だが誰であろうと答えは変わらない。
憧れの安部祷がやって来る以外のことは俺の頭に無かった。
たとえ地獄から悪魔が現れようと。
「そんな!
願えばなんでも手に入るのに、利己的で欲深な人間が無理しちゃって!」
「いいから今すぐ帰れよ。
お前がいたらややこしいことになるんだ」
正体が何であろうと見た目には悪魔よりも女子中学生然としている。
これから異性が部屋に来るのだから、非常にまずい。
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