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結界から出ると、辺りは薄暗くなっていた。とはいえ、生まれ育ったこの森なら、目を閉じても帰ることができる。静かに森を歩いていくと、かさっ、と頭上の木が揺れた。
「ティム?」
パウアが上を見上げると、さぁっと音もなく、木の上から降りてきた。
「パウア、今帰り?」
にっこり笑って、パウアの隣へ歩いてきた。
パウアより頭一つ大きい、細身のエルファの青年だ。
「うん、ティムは?森の見回り?」
「そうだよ。一緒に帰ろう」
そう言って、にっこり笑う。
パウアはアルフ。
エルフがこの森には1番多く住んでいるが、ティムはエルファ、と呼ばれている。
エルファは、エルフと、人間のハーフだ。
ティムの母は、パウアの母のいとこにあたる。森の外で暮らしていたが、ティムを身ごもって、ケルカの森へ帰ってきた。
産後しばらくして亡くなってしまい、ティムはパウアとともに長の元で育てられた。
混血であるティムは、正直村のアルフやエルフからは差別的に見られている。母がアルフであったため、外見はほとんどエルフと変わらないのだが。
当のティムは気にしていないようで、ひょうひょうと長の手伝いをして暮らしている。パウアとは一時期距離を置いていた。何故かはわからないけど。今は、毎日食事を一緒にしている。長はほとんど食事を必要としないので、トュリートがいなくなってからは、いつも2人だ。
「ユニコーンの森に行ってたの?トューリーは元気?」
アルフでないティムは、ユニコーンの森に入れない。が、トュリートやパウアから話を聞いて、心配している。
「うん、やっぱり元気ない。寂しいんだよね。」
自分の事は棚にあげて、パウアは言った。
「そうか…だよね。トュリート、元気かな…」
ティムが歩きながら、ふと横にある木のうろに目を留めた。
「ん、あれは…」
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