輪舞-ロンド-

9/13
前へ
/13ページ
次へ
手のひらほどのちいさな黒い穴は、そのままふっ、と消えてしまった。 後はただの茂みが残るだけだ。 恐る恐る、近づいて茂みに手を触れてみる。が、なにもおかしなところはない。 「パウアも、見たよね?」 ティムは自分の見た事が信じられない。 「うん、見たよ。小さな真っ黒い穴に、ウサギが吸い込まれて、消えた。なにこれ、おかしいよ」 「森の異変はすぐ長に伝えなきゃ。急いで帰ろう、パウア」 ティムはパウアの手を取って、走り出す。森の中央、長の住まいを目指して真っ直ぐに。 はしりながら、2人は嫌な予感に囚われていた。風の噂で、大地に異変がおきていると。その為に、森のあちこちで妙な事が各地で起きていると。 "…これがもしかして…異変なの?トュリートは、この為に旅に出たの…?" パウアの胸にじわじわ広がる不安。そして何故か、妙な期待感があった。 そのわけは、後にわかる事になるのだが。 「何かが、変わりつつある…」 ティムはぼそっ、と呟いた。 そしてそれは、自分に無関係では決して、なかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加