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手のひらほどのちいさな黒い穴は、そのままふっ、と消えてしまった。
後はただの茂みが残るだけだ。
恐る恐る、近づいて茂みに手を触れてみる。が、なにもおかしなところはない。
「パウアも、見たよね?」
ティムは自分の見た事が信じられない。
「うん、見たよ。小さな真っ黒い穴に、ウサギが吸い込まれて、消えた。なにこれ、おかしいよ」
「森の異変はすぐ長に伝えなきゃ。急いで帰ろう、パウア」
ティムはパウアの手を取って、走り出す。森の中央、長の住まいを目指して真っ直ぐに。
はしりながら、2人は嫌な予感に囚われていた。風の噂で、大地に異変がおきていると。その為に、森のあちこちで妙な事が各地で起きていると。
"…これがもしかして…異変なの?トュリートは、この為に旅に出たの…?"
パウアの胸にじわじわ広がる不安。そして何故か、妙な期待感があった。
そのわけは、後にわかる事になるのだが。
「何かが、変わりつつある…」
ティムはぼそっ、と呟いた。
そしてそれは、自分に無関係では決して、なかった。
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