振り回される幸せと振り回す幸せ

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「え?ちゃんと、聞いてるよ?」 サトルはわたしが不思議なことを言っているかのような顔で、こっちを見た。 やっとこっちを見てくれたのは嬉しいけど、なんかその目がいやだ・・・。 わたしが俯くと、サトルは子供に言い聞かせるように話し始める。 「シャオの働いてるケーキ屋さんに、期間限定の新メニューができたんだろ?」 「う、うん・・」 「だから、『へぇー』って言った。で、1人じゃ入りづらいけど、その期間中は友達も忙しくて、一緒に行く人がいないんだろ?」 「うん・・・」 「で、『そうなんだ』って返事しただろ?その後、サラが一緒に行こうって言ったから『うん』って言ったじゃん。これのどこが話し聞いてないって言うの?」 「・・う・・・」 この前、勉強した日本のことわざを思い出す。 『ぐうの音も出ない』ってきっとこういうことを言うのね・・・。 そう言われてしまえば、確かにサトルはわたしの話を聞いて、返事してる。 でも、視線を本に向けたままでそんな単語しか言わなかったら、話を聞いてないって誰だって思うわ!
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