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『姉ちゃん、ゴメン』
弟は、小さく呟いた。
『うん。ええよ。病院行こうね。』
転ぶわけにはいかない。
そればかりが、脳裏にあった。
道は、コンクリートで舗装されていたが、結構な下り坂で、慣れない道。
弟を背負い、歩き始めて数歩で、腕と足が震えているのが分かった。
一歩ずつ、慎重に。
あんなに神経を使ったことなど無かった。
母の顔が浮かび、妹の顔が浮かんだ。
病院に行けば、父が居る。
父は診療放射線技師だった。
目指す病院に勤務しており、私も弟も…産まれた時からお世話になっている。
あと少し。
あと少し。
と、自分に言い聞かせて歩いた。
手を離す訳にはいかない。
迎えに行く以上、道のりは遠くに感じられた。
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