お屋敷の子

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通された広間はアンティークの落ち着いた調度品で飾られ、壁にはまだ小さい頃であろう少女とその両親の肖像画があった。 少女自らお茶を持ってきて、静に腰掛けた。 きつく結い上げた金髪は落ち着いたオレンジ色のドレスによく映え、陶器のような肌に細い指。小さな顔はまるで名のある人形師の傑作のようだった。 「つまりこの先にある家に麻薬の密売人が愛人に匿われているからここで張り込みをしたいと?」 少女は鈴のなるような声で話し、 アルバートは笑顔で答えた。彼は見た目の割りに声が低い。 「はい、まだお若いのに物分かりが早いですね。」 「もう16になります。両親は事故で他界しましたので、私が当主です。子供扱いはやめてくださいますか。」 「し、失礼しました」 アルバートは驚きで顔を赤らめた。彼には彼女と同じ歳の弟が居たが、彼女は余程落ち着いていて理知的に見えた。 「失礼しました、ミス。アルバートはまだ刑事になって日が浅いものですから」 すかさず上司のスミスが執り成す。 メアリー・アンと名乗った少女は俯いたままだった。
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