❤自律神経失調症、序章

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❤自律神経失調症、序章

11月3日、私ははじめての独り暮らしをスタートさせた。 部屋のじゅうたんがグレイだったので、カーテンは明るいピンクを選んだ。 クローゼットが2つあり、片方は本棚、もう片方は洋服や鞄… 階数の都合でベッドでなく、布団だったのが残念だけど。 商店街が逆方向にあり、なんだかんだいって会社帰りに寄るのは、寂れたディスカウントショップだったけど。 …夜になると、しょっちゅう痴話喧嘩や救急車のサイレンがなっていたけど…。 帰っても、誰の声もしない。 はりきって料理をしても、パソコンを見ながらもくもくと食べる夕御飯はあまり美味しくない。 ゲームもネットもやり放題、なのにどこか…なにかが、足りない。 トイレットペーパーとシャンプー、豆乳や野菜やお米を全部一緒に持って、初めて母の声を思い出した。 「ゴロゴロしてるなら、買い物手伝ってよ」 ……あの時、いい歳してふてくされてたりしてごめんなさい、お母さん。 クリスマスも近づき、流石に寂れたこのあたりも少しは活気立ってくる。 けれど、そんな風景と反比例するように、私の気持ちは沈んでいった。 なんなんだろう。 なにが原因なんだろう。 引っ越し祝いに、親友からもらった鮮やかな赤いバラのブリサーブドフラワーが、うすく埃を被っていった。 …結局、冬休みになっても、帰省はおろか、外に出ることもなく、中古屋で買ったゲームを、あんま面白くないやと思いながら、ずっとプレイしていた。
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