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晴は弟を遠ざけると、
波が寄ったり遠ざかったりするのを、
何の気もなく見つめていた。
「あっ、
ピンクの貝だ。
本当にピンク色の貝、あった」
晴は、波がひいた時に、
ピンク色に光る貝を見つけた。
「・・・に見せてあげよ!」
弟に見せてあげなきゃ。
と思った瞬間、
さっき弟を無下に扱った事を思い出した。
あ~、・・・、どこに行ったんだろ?
晴はそう思いつつ、
辺りを見渡した。
そして
そして
そこからの記憶が無い。
何故だか、それ以来、
弟に会っていない。
というより
弟は存在していない事になっているようだ。
父親も母親も親戚も
誰一人として、弟の名前を口にしない。
いつのまにか新しい家に引っ越したので、
弟の存在を示す物は、何一つ無くなった。
何故だろう。
見付けたはずのピンク色の貝も、手元に残っていない。
・・・、という名の弟は
一体どうなったのだろう。
何だったのだろうか。
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