第一章

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晴は弟を遠ざけると、 波が寄ったり遠ざかったりするのを、 何の気もなく見つめていた。 「あっ、 ピンクの貝だ。 本当にピンク色の貝、あった」 晴は、波がひいた時に、 ピンク色に光る貝を見つけた。 「・・・に見せてあげよ!」 弟に見せてあげなきゃ。 と思った瞬間、 さっき弟を無下に扱った事を思い出した。 あ~、・・・、どこに行ったんだろ? 晴はそう思いつつ、 辺りを見渡した。 そして そして そこからの記憶が無い。 何故だか、それ以来、 弟に会っていない。 というより 弟は存在していない事になっているようだ。 父親も母親も親戚も 誰一人として、弟の名前を口にしない。 いつのまにか新しい家に引っ越したので、 弟の存在を示す物は、何一つ無くなった。 何故だろう。 見付けたはずのピンク色の貝も、手元に残っていない。 ・・・、という名の弟は 一体どうなったのだろう。 何だったのだろうか。
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