第一章

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人権について。 そんな授業内容を聞きながら、晴は あの記憶を思い出していた。 あれは今から 十年以上前だったな・・・ 「晴ちゃ~ん! 見てー。綺麗な貝が、いっぱいあるよー!」 六歳の夏、晴は家族と海に来ていた。 地元は海が無い県なので、 ちょっとした大旅行だったのだろう。 父親が運転する車の後部席に座り、 山ばかりだった景色が、海に変わっていく様子を、 半ば興奮しながら見た記憶がある。 「晴ちゃん、ほら、 光る貝殻だよ~?」 晴は、波が、寄ったり遠くなったりする事に疑問を抱き、夢中になっていた。 そんな中、弟がしつこく貝について喋りかけてくる。 「ねー、光る貝だってばぁ」 「分かったから~ 光る貝、凄いね。 ・・・、もっと貝探してくれば? あっちにピンク色の貝があったよ」 晴は、弟を遠ざけようと思い、貝を見に行く様に促した。 ただ、あの時、弟の名前を口にしたのだが、 記憶の中にどうしても弟の名前が出て来ない。
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