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さみしいけものを知っていますか。
さみしいけものは、遠い山の中に住んでいて、時々町に降りてきます。
降りてきたら、そっと子供のお布団に入ってきます。
そしたら、子供は急に、眠るのがさみしくて、わけのわからない悲しい気持ちにぐずって大人を困らせます。
さみしいけものは、山の中で、たった一匹で暮らしています。
朝も昼も夜も、たったひとり、山の中で…。
さみしい、さみしいけもの。
さみしいけものは、今夜も町に降りてきて、お布団に入ったけどまだ眠っていない子供を探しました。
子供が泣けば、けものは少し楽になります。
楽になったらまた、山に帰ります。
山に帰りながら、ざまみろ、ざまみろ、ざまみろとつぶやきます。
みんな大嫌いだ。
泣いていい気持ちだ。
ところが、今夜はお布団の中で起きてる子供がなかなか見つかりません。
けものは、歩き回りました。
このまま、朝になって山に帰ったらどんなにさみしいでしょう。
しょぼしょぼ雨が降ってきました。毛皮が冷たくなって、ますますさみしいけもの。
でも、子供がお布団の中で起きていなきゃ入っていけません。
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