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ぐずりの姿は、薄れ始めました。
女の人は、いいました。
「さよなら。ぐずり。よかったら、今度はピンクのリボンのぐずりの話を聞かせてね。」
ぐずりは、お布団を飛び出しました。
窓のすきまから外に出て、後ろを振り返ると、女の人がカーテンを開けるところでした。
女の人の目は涙で濡れていました。
でも、口もとは少し笑っていました。
ああ、泣いた、泣いた。
ざまみろ…、とぐずりは思えませんでした。
いつもと違う気持ちでした。
ピンクのリボンのぐずりなんて、口から出任せでした。
でも、ぐずりは自分がピンクのリボンのぐずりと山を走り回ることを想像しました。
走り回ったあとは、二人で丸くなって眠るかもしれません。
ピンクのリボンのぐずりがお腹がすいたら、美味しい木の実がなっているあの茂みに連れて行きたいなあ、とぐずりは山に帰りながら思い描きました。
気づいたら、ぐずりの目から涙が流れていました。
涙は朝日に照らされてキラキラ光りました。
ぐずりは自分が泣くのは、初めてでした。
なぜだか、あまりいやではありませんでした。
おしまい
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