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「湖に沈め、魔力を帯びた石――“魔石”を使った火力発電だろ。
化石燃料を使ってないから二酸化炭素がでないという点で環境に優しく、安全管理が確立していない原子力発電よりも管理が簡単で量を間違えない限り、安全」
「なんだ、やる気が無くなったと言ったわりには、なかなか知っているじゃないか。
ちなみに量を間違えるとどうなる?」
「うるせぇなぁ……」
悪態と溜息をつき、頭を掻きながら答える。
「魔石の入ったボイラーが熱に耐えられなくなり融解する。だろ?」
「うむ、正解だ」
里香は満足そうに頷き、煙草を吸う。
柊一は吐き出される煙に顔をしかめながら、再度、溜息をついて続ける。
「日本は資源を魔力のみに転換して化石燃料やウランやプルトニウムの輸入を止めた。
それと同時に国民へ魔力の存在を発表。各地で抗議やら資源の輸入やらの反発があったが、国はさまざまな政策でそれらを沈め、さらに魔石を車などの燃料やその他のものへと技術運用させた」
化石燃料からの転換、政策による抗議や反発の鎮静、魔石の技術運用。
この時、日本は琵琶湖の奥底に存在する門と魔力を発見して二十年の時が過ぎていた。
「こうやって歴史を並べて見てみると結構上手くいってるように見えるけど、その裏では問題が山積みなのよね……」
口から煙草を離し、白衣のポケットから取り出した携帯灰皿に灰を落とて里香は言った。
「そうなのか?」
柊一は里香の横顔を見やる。
「そうよ。魔石が帯びている魔力の謎。その発生元である門の謎が明らかになっていなかったんだから」
「問題……なのか?」
「分かってないわね……。
一度使用した魔石は砕けてしまい再利用できない。これは知ってる?」
頷いて、柊一は棒飴を咥える。
「じゃあ、魔力についてはどうかしら?」
「未知のエネルギー体としか……」
「そう……。あなたは今、日本での食糧自給率がどれくらいか分かるかしら?」
柊一は眉を顰めて首を横に振る。
「それと魔力、どう関係が?」
「魔力が発見される前までは輸入に頼りっきりで自給率は五割を切っていたわ。
だけど、今は百パーセント。これは秘密なんだけど、国は資源と一緒に食料の輸入も止めているの」
「はい……?」
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