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里香が言っていたことが事実だと言うなら、ここ十年間、この国は輸入ではなく自分たちで作った食物で過ごしてきたということになる。
「……本当か」
柊一はあまり信じることができないでいた。
「まぁ、こんなこと急に言われても信じることなんてできないよね」
煙を吐き出し、短くなった煙草を携帯灰皿にねじ込む。
「私の研究分野は魔力についてだ。その結果、魔力はこの下の門から発生して日本を覆い尽くしているということ。
魔力の力により生物や植物が生きやすい環境になっていることが分かった。
つまり、魔力のおかげで食料品を輸入せず、自国での生産でまかなえているということ」
里香が研究員であることは本人から聞いていたため柊一は知っていた。
しかし、研究分野までは知らなかった。
――しかも、結構重要なこと研究してるし……。
よく“こんな人”が研究者になることができたものだと柊一は感心する
「そういや、さっき魔力については謎って言ってただろ?」
「“明らかになっていなかった”。過去形よ。
魔力についてもそうだけど、門についての謎も明らかになっているも当然なのよ?」
「ここの研究員って優秀なんだな……」
「フフ、もっと褒めなさい。私は褒めて伸びるタイプで、叱って伸ばすタイプだから」
――ああ……だからそんな派手な赤いスーツなのね……。
妙なところで納得してしまった柊一。
一方の里香は上手いことを言ったと、自己陶酔に入っている。
柊一は元に戻すためにも、質問を投げかけた。
「じゃあ、さっき言ってた問題も解決したのか?」
里香は左手を右ひじに、右の人差し指を眉間に当てた何とも痛いポーズを崩し、答える。
「いや、それは残念なことにまだだ。というかその問題を解決するためにお前たちがいるんだから」
「俺たち?」
「そう、君たち」
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