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柊一は小さくなった棒飴を噛み砕きながら、首を傾げる。
魔力の問題解決のためにどうして自分たちが必要なのか、そもそも、魔力の問題とはなんなのか。
それらの疑問が頭の中を駆け巡る。
そんな様子に里香は微笑みながら答えた。
「ここが何故作られたのかを考えれば分かる」
――ここが作られた理由……。
この“タカマガハラ”が作られた理由は複数ある。
この下にある門と魔力の研究機関を置くため。
他国に魔力の存在を知られないようにするため。
燃料となる魔石を精製するため。
それらに含め、さらに“魔法遣い”を作り出すことがある。
――そうか……。
里香が言った通り、柊一は理解した。
魔力の問題。
それは、“人のみで魔力を使えないこと”。
「分かったみたいだな」
飴の無い棒を咥えながら首を縦に振る。
「まぁそういうことだ。
今、私たちは魔石を媒体にしないと魔力を使うことができない。
くず鉄やそこいらの石ころでも魔石を作り出すことはできても、時間がかかる。
遠い将来だったとしてもいずれは魔石の媒体となる材料も無くなるだろう。
そのための魔法遣いだ」
そう言って里香は柊一に真っ直ぐ目線を向けた。
「魔石を媒体にしてではなく、そのまま魔力を遣う。そうすれば、魔石を使うことなく魔力を効率よく供給できる」
「それだけのための魔法遣いか?」
「もちろんそれだけではない。他にも活用はあるさ。
魔力を今はできていない医療の分野に用いることができるかもしれない」
――まったく、この人は……
柊一は里香の瞳が夢を話す子どものように輝いているように見えた。
性格や服装はともかく、この人は人々の未来を考える立派な研究者だ。
新たに棒飴を咥えると、もう一つ疑問が浮かぶ。
「なぁ……どうやって魔法遣いになるんだ?」
魔石を用いることで魔力を使用することができるが、魔石無しでは触れるはおろか視認することも感じることもできない。
――そんな状態でどうやって魔法遣いになれるのだろうか?
これに里香は不敵に笑って見せた。
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