4人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
「それに必要なのが“門”さ」
「なんで“門”なんだ?
あれは魔力を生み出すだけのもので門の先は何もないって聞いたぞ?」
「それは今のままでの話だ。門をくぐりその先にある“世界”に行くにはある状態にならなきゃいけない」
「ある状態?」
「そう……“死ぬこと”だ」
「…………はっ?」
驚きのあまり、柊一の口から棒飴が地面へと落ちる。
カツンッ! という小さな音をたて飴は砕けた。
「それって一体……」
どういうことだ? と続けるはずが急に下の階へと続く扉が開き、一人の少年が入ってきた。
「おっ、いたいた」
現れたのは、良く言えば大人びた、悪く言えば老けている少年。だが、柊一と同じクラス、同い年であり、同じ第一期生の生徒である。
黒髪短髪と柊一と同じだが、少年の方が短い。
柊一の髪は学校の検査に引っ掛かり、少年の方は検査に通る。そんな差だ。
少年は糸のように目が細く、笑みを浮かべている。
いつもこのような当たり障りのない笑顔だが、本人いわく感情が高ぶると目が開くらしい。
ブレザーの左胸には青い名札がピンで留められている。
そこには【生徒会長 井上 正也(イノウエ マサヤ)】と少年の役職と名前が彫られていた。
「ここにいたのか、シュウ。先生もこんにちは」
「こんにちは」と返す里香に対して柊一の方は不満気の顔だった。
――ちょうどいい時に、入ってきやがって。
「どうしたんだ、シュウ?」
「なんでもない、それで生徒会長であるマサ様が何か俺に御用ですか?」
柊一が“シュウ”、正也が“マサ”と親しく呼び合っているのは二人が寮の同じ部屋を使っているからである。
柊一と呼ばれると両親を連想するので数少ない友人たちには“シュウ”と呼ぶように言っている。
「なんだい、棘のある言い方は……」
「別に……」
「まぁいいさ」と正也は肩をすくめる。
「今日の授業は終わりだから昼飯でもどうかと、思ったんだ」
「早くないか? 今、三限が終わったくらいだろ?」
「今日は元々、四限で終わる予定だったんだよ。
それで、四限がLHRでさらに早く終わったんだ。ほら、みんな早く帰ってる」
下を覗くと確かに多くの生徒が下校していた。
最初のコメントを投稿しよう!