第一章 神と希望は痛みから

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-2- 「やっと、ついた…」 息を切らしながら、腰だけは抜かさないように膝に手を掛け息を整えた。 この石段は下から眺めるよりも遥かに長く、高く、僕の脚は絶え間無く震え、もう限界だということを示していた。 それでも少しでも早く希望を現実にしたかったから、僕は歩いた。 鳥西神社と書いてある鳥居をくぐりぬけ、お世辞にも綺麗とはいえない神社へ歩いた。 おさい銭箱が近くなるにつれて、希望が胸に広がるのを感じた。 早足だったのか、あっという間に社の階段まできた。 確か人間は神と同じ高さに上がったらいけないんだよな。 僕は階段下でかた膝をつき、頭を下げた。 「神様…僕の願いを聞いて下さい!」 ……………………… ……………… ………… …… …返事がないただの屍のようだ。 いやもういっかい! 「神様…どうか、どうか…僕の願いを聞いて下さい!!」 ……………………… …………………… ……………… ……………… ………… ……… …返事がないただの屍のようだ。 やばいな、これかなり恥ずかしい…。 その時一つの考えが頭を過(よ)ぎった、神なんて最初から存在しないってこと。 それは、当たり前のようで、当たり前じゃないこと、僕は伝説に縋り付いて、狭い視野で、自分の見解だけで物事を判断してしまったのかもしれない。 常識的に考えて、いるはずがない。 裏切られる確率の方が高いのに、希望を信じた僕は愚かなのだろうか。 もう疲れたな、そう思うと足は自然と下に続く階段に向いた。 「希望など存在するはすがない。奇跡か魔法がないかぎり。そうだろ?」 希望は絶望の始まり。 絶望は希望の始まり。 つまり僕は、絶望から希望へ希望から絶望へ落とされたんだ-- もう一度希望もてるほど僕は強くない。 だから、絶望の終りを自分に与えよう。 「この階段降りる時は楽できるぞ。」 あいつと僕の絶望の終りへと足を踏み出そうとした時だった。 「呼んだかのぅ?」 今まさに飛び降りる寸前に胸に向けて飛んできた銃弾。 「なんじゃそのハトが豆鉄砲くらったような顔は、お主が強い意志で我を呼んだのであろう?」 目の前にいる女は僕の最後の希望の姿だった。
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