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通学路
「ねぇいきなりだけど、嵐真は進学?就職?」
本当、いきなりだな。
まぁ進路は決まってるから答えるけどさ。
「んなの決まってんじゃん。就職。ウチに進学する暇も金もねぇよ。高校だって今すぐ辞めたいくらいだ。」
「……やっぱりそうだよね。ごめん。」
依吹は俺ん家の事情がわかっているから、それ以上は聞かなかった。
父親はすでに他界。
母親はつい最近倒れた。
(依吹は進学だから…どうせ、同じ大学行こうとか思ってたんだろうな。)
「別に気にすんなよ。俺は就職、依吹は進学。別々になったって俺らの繋がりが切れるわけじゃないんだからさ……てか家隣だし。」
交差点が赤信号になり足を止める。
「……そうだよねっ!!ごめんね暗くなっちゃって……嵐真がまともな事言うなんて、今日が最後みた「あぶねぇっ!!」……え?」
俺は依吹の話の途中で走りだす。
なぜなら、赤信号に気付かずこっちに向かってくる小学生が居た。そして横からくるトラック。
運転手の顔が下を向いてる!?
危ないと感じた俺は小学生に向かって走り出した。
「い………いやぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
後ろから依吹の悲鳴。
うるせぇな。間に合うと思ったから行動してんだよ。
やすやすと死ねに逝けるかってんだ。
小学生を抱え込んで、思いっきり地面を蹴る。
響き渡るブレーキ音
キキィーーッ。
「いやいや……らんまぁぁぁぁぁぁ。」
叫ぶ依吹。
そして俺は…………。
「依吹………うるせぇよ。生きてるっての。」
無事でした。
「え?」
泣き止みこっちへ顔を向ける依吹。
目に写っているのは、小学生を抱えて横たわる俺がいるだろう。
「嵐真っ!怪我は!?大丈夫なのっ!?」
急いで駆け寄っていくる。
「俺は大丈夫だよ………おいボーズ。大丈夫か?」
腕の中にいる小学生へ声をかける。
「う…うんっ!大丈夫っ!ありがとうっ。おお、お兄ちゃんは?!大丈夫だった?!ま…またねっお兄ちゃん!!」
何事もなかったかのように、腕からするりと抜け出し、走り出して行く小学生。
「お、おぅ……またな…」
見えなくなるまで小学生を見送る俺。
「嵐真、とりあえず立ちなよ。」
依吹が差しのべた手を握り……
「……そうだな」
立ち上がろうとしたその瞬間……
「「………え?」」
すごい速さで近づいてくるワゴン車。
ドカッ
俺らは意識を失った。
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