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ある山中にて。
3月上旬、春先とはいえ、まだまだ冷え込む日々が続いていた。
「ちくしょー…なんだってこんな山奥で故障なんだよ!」
ピクリとも動かなくなった車を見ながら、途方に暮れていた。
「アケミのやつが迎えに来いって言うから来たら、全然そんな店ないじゃねーか!電話かけて文句いってやる!」
ポケットから取り出した携帯に手をかけた瞬間…
『け、圏外だと?!』
「これじゃ、救助も呼べないじゃないか…」
携帯が使えないとわかった途端、すこし焦りが出てきた。
車もこのままにしておくわけにもいかないし…
さきほどまで、見えていた夕日が完全に落ちて、完全に当たりを暗闇で覆った。
それが余計に気を逸らせる。
『気持ちわりーな…、どうしようか。歩いて戻るには遠いよな』
そのとき、考えていた横顔を何かが照らした。
ふと横を向くと…
木々から漏れる明かり。
「さっきまで薄暮だったから気づかなかったが、真っ暗になったおかけで明かりがついたのか…」
助かった、民家がある。
辺鄙なところにある家で薄気味悪いが、仕方がない。
この寒さを凌げるんだ。
それに電話ぐらいあるだろう。
電話を借りて、救助が来るまで待たせてもらおう。
安易だったのかも知れない。
ただこの気味の悪さと寒さから逃げたかった。
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