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『こ、こいつなんで俺の名前を知っているんだ?』
ここから俺は生きて帰れるのか?
引き戻したくても、足がいうことをきかなかった。
『情けねーが、ヤバいぐらい怖い…』
「な、なんであんた、俺の名前を知っているんだ?」
「遠野朱美さまより承りました。あ、申し遅れました、私、当家の執事、白崎と申します」
俺がここへ来ることが当たり前だったかの様に、淡々と答える男。
『朱美が?朱美は迎えに来いって……あいつ、何を考えているんだ?』
「おいっ!承ったって、朱美に何を言われたんだ?」
「最高のおもてなしをするようにと…そう承っております。どうぞ、こちらへ。今宵、ごゆっくりとおくつろぎ下さいませ」
そう言うと、白崎は踵を返し、長い廊下を歩き始めた。
『奴について行くのか?でも、このドアは開きそうにないし…』
俺の考えが読めたのか…
白崎は振り返りもせず、俺に話しかけた。
「ドアは開きませんよ。遠野さまからの依頼により、佐伯さまには充分なおもてなしをしなければなりませんからね」
身体中から、変な汗が出てきたのがわかった。
もう行くしかないのか…
くそっ!なんだってこんな目に…。
朱美のやつ、何がしたいんだ!
しばらく、俺は白崎の後姿をみつめていた。
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