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教室に着くと、もはや昨日の事件のことなどなかったかのように誰も高屋のことを心配することはなかった。
やはりみんな間近に迫った進学先のことで頭がいっぱいで他人のことなんか気にしていられないのだろう。
そんな様子を見ていると、この時期にこんなことに首をつっこもうとしている自分が異質なのだと思い知らされる。
ただ由利だけは、昨日は大丈夫だったかと訊ねていた。
しかし、由利の顔には全く心配の色はなかった。
学校に着く前とは違い、高屋の顔に不安はなくなっていた。
その顔を見れば聞くまでもないと思ったのだろう。
朝のSHRが終わると高屋が木島に呼ばれた。
何事かと思っていると、一言二言、言葉を交わしただけで解放された。
そして、その足でこっちの方へ歩いてくるので、何か言いたいことがあると思い、声をかけた。
「どうかしたのか?」
高屋は首を傾げている。
「昼休みに職員室に来いってさ。やっぱり昨日の嘘がばれたのかな」
佐々木もつられて首を傾げる。
昨日の嘘であれば聞いた時点でばれていたはずだ。
なのに今さらそれを問いただす必要があるのか。
一昨日の事件に関することなのか、それとも全く関係のないことなのか見当がつかない。
しばらく二人で黙って考え込んでいると、英語教師が入ってきたのでやむなく思考を中断させた。
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