三年7

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 昼休みになり高屋が職員室に行ったので、由利と二人で昼ごはんを食べていた。  「高屋君、どうしたんだろうね」  由利が訊いてきた。  「さあ。高屋は昨日のことがばれたんじゃないかって言ってたけど」  授業中も時々考えていたが、まだ結論には至っていなかった。  昨日あれだけ自慢げに話していたから先生たちの耳に入っていてもおかしくはなかった。  しかし、わざわざ職員室に呼び出してまで話をすることではないだろう。  その時、豪快にドアを開けて高屋が戻ってきた。  その顔は興奮と怒りで真っ赤だった。  足音にもその感情が滲み出ている。  「何だった?」  余計なことは言わなかった。  高屋の感情は爆発寸前という感じだったので一言で十分だろうと思った。  すると高屋の中で感情を抑えていた堤防が決壊したように一気にしゃべりだした。 「まだ報道されてなかったけど昨日も強姦事件があったらしいんだ。それでその犯人っていうのは、この学校の制服を着ていて、しかも坊主頭らしい。だから今、警察が俺のことを疑っているんだ」  この学校では坊主頭を強要するような人権無視をする部活はない。  それでも高屋は高校球児が坊主でなくてどうするんだと言って頑なに坊主頭を貫いていた。  だからこの学校で坊主と言えば高屋しかいない。  だけど、そんなことだけで犯人扱いされることはないだろうし、これまでのことを考えるとこの怒りようはおかしい。
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