三年8

2/12
前へ
/263ページ
次へ
 まさか小林瑞穂が、と由利は考えていた。  小林とは実際に会ったことがない。  それでも佐々木の卒業アルバムで写真は見たことがある。  とても大人びた印象で、中学生のはずなのに高校生である自分よりもよっぽど年上に見えたのを覚えている。  この子に言い寄られたら佐々木は自分のことを捨てるのではないかと不安になった。  それでも小林に対して嫌な印象はなかった。  むしろ大人の女性という感じで憧れもあった。  もしかしたら昨日、高屋の思い出の中に出てきたのは佐々木に最後に別れを告げるためだったのではないかと思った。  当然、そんなはずはないと分かっているのだが、以前彼女は佐々木に告白をしたそうだ。  その時は佐々木は断ったそうだが、一年近くしてもう一度佐々木に近づいたのはまだ好きだったからではないか。  そして今も好きなままなら、最後に好きな人に思い出してもらいたいと思い、高屋の頭の中に出てきたとしてもおかしくはない。  無残に自殺した姿ではなく、奇麗だった時の姿を思い出してほしかったのだ。  どういう気持ちだっただろう。  見知らぬ二人組に車の中に連れ込まれて、どんなに大声を上げても誰も助けには来てくれない。  そしてその様子を嘲笑うかのような犯人たち。  ひたすらに苦痛を与えられ続け、最後にはゴミのように捨てられる。  そこには何が残ったのだろう。
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加