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胸の中にどす黒い吐き気を催すような感情が渦巻く。
由利は我慢できなくなり言葉としてその感情を吐きだした。
「もしこの犯人が捕まったとしても、死刑になるほどの罪にはならないんだよね。それっておかしくない? こういう事件の被害者が自殺することって珍しいことじゃないよね。言ってみれば、犯人が死に追いやったんだから、殺人と一緒なんじゃないの」
報道によれば、おそらく裁判になると懲役二十年程度が求刑され、結局のところ十五年程度で収まるみたいだ。
十五年というのは自分たちが今まで生きてきたのと同じぐらいの時間を刑務所で過ごすということで決して短い時間ではない。
だけど被害者とその家族はもっともっと長い時間を心に一生消えることのない傷を負って生きていかなければならないのだ。
「そうだよ。俺、この犯人たち、絶対許せねえよ。今も犯人たちはのうのうと生きているなんて、そんなこと絶対あっちゃいけないだろ」
高屋はかなり憤っていた。
その一方で、佐々木の方に目を遣るとじっと目を閉じている。
考えをまとめているようだ。
「それで、どうするんだ? お前もこのままでいいわけないよな」
高屋が佐々木に訊いた。
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