三年8

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 佐々木はこちらを見て微笑んだように見えた。  後悔しているのを察してくれたのだと分かった。  だけど、それは一瞬ですぐに真顔に戻った。  そしてゆっくりと言葉を一つ一つ吐き出した。 「落ち着いて、俺の話を聞いてくれ。さっきも言ったように、高屋が強姦魔に間違われて襲われたのは間違いないと思う。以前はたまたま助かったが、今度同じ目に遭ったら助からないかもしれない。それに由利だって、もし本当にこの学校に犯人がいたとして、そいつに近づいて行ったら、今度は由利が危険な目に遭うかもしれない」  ここで危険な目と表現したのは佐々木の気遣いだろう。  具体的な表現をすると生々しい情景が思い浮かぶ。  自分の身の危険を案じてもらっていることが分かり、高屋は少しだけ落ち着いた様子を見せた。 「だけど、このまま黙って見ているのも、耐えがたいぜ」 「分かってる。でも、一つだけ突破口があるかもしれないんだ」 「何だ、それは?」 「お前を襲った三人組だよ。彼らから話を聞いてみる」 「さっき、事件とは関係ないって言ったばかりだろ」 「被害者は犯人を直接見てる。犯人がこの学校の生徒やOBなら警察が聞くよりも俺が聞いた方が犯人につながるかもしれない」
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