三年9

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「その方が俺らしいのかもな。キャッチャーってそんなもんだし。どんなにピッチャーが打たれても抑えても、記録に残るのはピッチャーだけだもんな。本当はピッチャーよりもキャッチャーのリードの方がよっぽど大事なのに」 「へえ、そうなんだ。あんまり野球のことは分かんないけど、何かそっちの方がかっこいいよ。黒子役に徹してるって、縁の下の力持ちって感じで」 「そうなんだよ。良いチームには必ず良いキャッチャーがいるんだよ。プロ野球とか見てても、有名なキャッチャーがいるとこが優勝争いしてるだろ」  高校野球ほど実力差があれば良いピッチャーがいればそれだけで勝てたりもするのだが、プロ野球みたいに実力が拮抗しているチーム同士の試合になった時、勝敗を左右するのはキャッチャーの実力だと思っている。  高屋の応援しているチームにはもう十年近く一人のキャッチャーがどっしりと構えているので毎年、優勝争いに食い込んでいる。  年ごとにキャッチャーが変わるチームはチーム力が安定しないのだ。  そういう野球観を持っているからこそ、キャッチャーというポジションが好きだった。
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