三年10

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 ここで言う被害者というのは小林のことだろう。 「被害者の証言と言うのが納得できないことの一つです。彼女は被害に遭ってそのまま自殺したんじゃないんですか?」  佐々木はあえて生徒指導の方を見て言った。  こっちの方が情報を引き出しやすいと思ったのだ。 「ひ、被害者が自殺する前に友達にメールを送ったらしいんだ。その中にうちの学校の生徒だと書いてあったそうだ」  生徒指導が言うにはそのメールにはこのようなこと書いてあった。  強姦に遭ったこと。  そして、捨てられるように見たこともないような場所で車から放り出されたこと。  しかも、その犯人が佐々木たちの学校の生徒であること。  最後に、もう生きていけないということ。  話が具体的になるにつれ、佐々木も冷静さを失いつつあった。  しかし、一度目を瞑り、なんとか気を持ち直した。  今、出来ることをしなくてはいけない。 「じゃあ、この学校って特定されたのはたまたまこの学校の制服を知っていた被害者だったからってことですか? それまでは、高校生だってことは言われてなかったんですか?」  閉じた目を見開き、まっすぐに生徒指導を見た。 「いや、高校生ってことは言われていたみたいなんだ。でも、はっきりとうちの高校と言われたのは今回が初めてなんだ」 「それで何で高屋だったんです? こういう話をしたのは高屋だけですか?」
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