三年10

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「はっきりとした理由があるわけではありません。友達だから、希望的観測でそう思うだけです」  佐々木は正直に答えた。 「そんなことでは、警察が納得してくれないことぐらい分かるだろう。うちとしては、警察に報告する義務があるんだから」  木島が首を左右に振りながら、話にならないといった顔をしていた。  こいつも佐々木のことが嫌いなのか。  それとも嫌っていることがこいつに伝わったのか。  わざわざここで説明するのも煩わしかったが、佐々木は一秒でも早くこの場を去りたかったので、一気にしゃべった。 「一つ目として、高屋の家の車はセダンです。犯人の車はワゴンだったはずです。まさか、高校生が親に内緒で車を持てるわけがないでしょう。二つ目に、うちの高校の制服を着ていたことです。犯人が自ら正体をばらすことをするはずがありません。三つ目に、彼の態度です。彼は今日の昼休み、職員室から帰ってきた時、怒りを露わにしていました。もし犯人だとしたら、あの態度はおかしい。おそらく先生たちも見てたでしょう。ざっと思いつくことだけでも、これだけの理由があります」  ここで、一息入れて、二人の顔を交互に見た。 「もういいでしょう。僕らはこの事件には何にも関係がないし、ましてや犯人であることはありえません」
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