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佐々木は職員室から逃げるように去り、そのまま図書館に向かった。
外は何事もなかったかのように普段と変わらない雰囲気で満ちていた。
空は夕焼けの赤みが滲んでいる曇り空だった。
佐々木も、もし、被害者に知り合いが含まれていなかったら、高屋が犯人として疑われることがなかったら、気にも留めていなかっただろう。
そして一か月もすれば思い出すことすらなくなってしまうのだろうと思った。
図書館に着くといつものように勉強には向かわず、一週間分の新聞がまとめて置いてあるコーナーに行った。
そこには誰もいなかった。
最近は携帯やパソコンを使ってインターネットを通じて情報を得る人が多くなったからだろう。
そのうち、紙の新聞はなくなってしまうのではないかと思ってしまう。
それでもまず新聞を読もうと思った。
今日の夕刊にはすでに昨日の事件が載っているのではないかと期待したからだ。
予想通り、夕刊には朝刊には載っていなかった昨日の事件が記載されていた。
被害者が自殺したというのは、なかなかセンセーショナルだったようで、各紙の全国面で扱われていた。
それらに目を通していると心の中には怒りが湧き上がってきた。
突沸ではなく、じわじわと温度が上がっていくのを感じるほどゆっくりに、だ。
何に対して?
佐々木は自問自答する。
それは犯人に対して、また事実だけを伝える、まさに無関心の世間を象徴しているかのような記事に対して、そして何より自分自身に対してだ。
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