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図書館を出ると辺りは真っ暗だった。
曇り空のせいで空は黒一色でベタ塗りしたようになり、そんな空を見上げると真っ暗な深海のように思える。
天と地が入れ替わってそのまま宇宙の遥か彼方まで落ちていきそうな気がした。
佐々木と由利はしばらく黙って歩いていた。
夕方とは打って変わって人はほとんどいなかった。
真っ暗な中に二人だけの世界が広がっているようだった。
だけど、佐々木は考え込んで言葉を発することはなかった。
由利も佐々木に気を使ってか、自分からは何も言ってこなかった。
そんな中で、やはり始めに口を開いたのは佐々木だった。
「色々考えたんだけどさ、俺、この事件のことを楽しんでいたんだと思うんだ」
「楽しんでいた?」
「始めは仕返しとか言って、むしろ高屋が襲われたこととこの事件が関係していてくれたらって思ってた。だけど、いざ被害者が知り合いだったってなると、これだけのショックを受けてる」
佐々木はあの時の自分の胸が興奮で高鳴った感覚を思い出した。
挙句、何かドラマチックなことが起きないかなんて考えていた。
被害者にとっては辛いことでも、傍観者だった自分は無邪気に楽しんでいたのだ。
「最低だよ、俺」
自分の中で黒々とした罪の意識が無限に広がっていくのを感じた。
その重みで真っ暗な深海へ沈み込んでいくような気がした。
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