三年10

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「でも、世の中のほとんどの人がそうじゃないかな。ニュースを見て、同情したような態度をしているけど、あくまでもそれは自分には決して関係がないことだって分かってるからそういう態度でいられるんだと思うよ。大祐君が特別なわけじゃないよ」  由利はなんとか励まそうとしてくれているみたいだ。  沈み込んでいく心をすくいあげてくれるような口調だった。 「そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり俺はみんながそうだからってことにしたくないんだ。他人の不幸なんかそっちのけで、自分が楽しむことしか考えてなかったことには変わりないから」 「言ってることは分からなくもないけどね。だからってそんなに自分を責めてどうするの? どんなに後悔しても、何も変わらないよ」  少し口調が強くなった。  すくいあげても効果がないと悟って、今度は蹴りあげるようだった。 「それはそうだよね。何も変わらない。後悔って自己満足以上のものにはなりえないから」  感情というのはいつも過ぎ去ったことに沸き起こる。  後悔というのは、それの代表的なものである。  どんなに後悔しても何も変えられない。  自分のやっていることはあのコラムの犯人と変わらないのだから。
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