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高校二年の七月、梅雨も明け本格的な夏に入ろうという時の出来事だった。
その出来事の始まりとなったのは、休日で高屋の部活も午前中で終わる日だったので、三人で映画を見ることになり、見終わったあとに入ったファーストフード店でのことだった。
適当に注文を済ませて、それぞれが商品を受け取り席に着いた。
高屋の前では佐々木と由利が並んでさっき見た映画の話をしている。
ベストセラーの映画化だったらしく二人は原作を読んでいて、あのシーンがなかったのは残念だったななどと話している。
だけど高屋は映画のことはほとんど頭に入っていなかった。
朝、聞かされたことで頭がいっぱいだった。
そこで横の客同士が口論しているのに気付いた。
正確には一方の客が意味不明なクレームを付けているだけだった。
「だから、その子が食べ物を全部食べると何で貧しい国の子供が救われるんだよ?」
男が親子連れに言っている。
おそらく母親が子供が食べ残したのを見て食べたくても食べられない子供が世界中にたくさんいるんだから食べなさいとでも言ったのだろう。
「食べ物を粗末にしてほしくないんです。ほっといて下さい」
母親はかなり怒っている。
「教育者として子供に嘘を教える親をほっとけるわけないだろ。その子がお腹いっぱいで苦しい思いをしたのに実際は誰も救われてないって分かったらどうなるんだよ? 非行に走ったらどうするんだよ? こういう親に限って全部教師のせいにするんだよな」
「そんなことありません。あなた、教師なんですか?」
「そうだよ。あんたみたいな、意味不明な理屈をこねる保護者と闘ってる小学校の先生だ」
「私はそんなことしません」
「どうだか」
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