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由利はこういう時は決まって、微笑を浮かべて聞いている。
その眼差しは温かく、何かに包まれるような感覚になった。
それは二人がくだらない会話をしている時によく見せるものだ。
由利は二人が話しているときはあまり積極的に会話に入ってこようとせず、こうして見守っていることが多かった。
「それで、これからどうする?」
高屋が訊いてきた。
不意に言われたので意味が分からず、佐々木はただ高屋を見返すことしかできない。
「このままやられっ放しでいいわけないだろ。仕返しだよ」
高屋がにっと悪戯っ子のような笑顔を見せた。
そういうことかと佐々木は合点がいった。
「お好きにどうぞ」
「お前も仕返しするんだよ」
高屋は当然のように言う。
「お前が仕返しすることに何で俺が関わってくるんだ?」
そう言いつつも佐々木の胸は高鳴っていた。
「俺たち親友だろ。俺が襲われたのは、お前が襲われたも同然だろ」
佐々木は肩をすくめてみせた。
高屋はたまにこういう相手が気恥ずかしくなるようなことを言ってくるのだが、佐々木はそれほど嫌じゃなかった。
「それで、どうするんだよ?」
「俺が訊いてるんだよ」
そういえばそうだったと佐々木は間抜けなことを言ってしまったことを後悔した。
「まあ出来ることと言えば、警察に行くことか、お前を襲った三人組を見つけ出すことのどっちかじゃないか。でも現実的には、警察に行くのが一番だよ。仕返しって言ったってそんなものだろ」
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