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その口げんかに男の連れの女が割って入った。
「すいません。この人少しおかしいんです。気にしないで下さい」
最初は他人を決め込んでいるように無視していたがあまりに見かねて間に入ってきたのだ。
「あんたもいい加減にしなさい。意味不明な理屈をこねてるのはあんたでしょ。私まで恥ずかしいじゃないの。だからあんたと出かけたくないのよ」
今度は男の方に向き直って言った。
そんなことを言うぐらいだから恋人同士ではないだろう。
そう言って女は男の腕を引っ張り店を出て行った。
男はまだ言い足りない顔だった。
高屋は世の中には変わった人もいるんだなと思った。
変わっていると言えば目の前の佐々木もそうだ。
一年以上の付き合いになるが時々何を考えているか分からない時がある。
だから佐々木に訊けば自分では考えつかないようなことも教えてくれると期待していた。
「なあ、いじめってどう思う?」
高屋は直接本題には入らず遠まわしに訊くことにした。
二人はきょとんとしている。
失敗したかなと思った。
「いいことでは、ないよね」
由利が答えた。あまりに唐突な質問にどう答えるべきか分からないようだった。
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