二年1

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「そうだ。いいことではない」  高屋は二、三度頷きながらそう言った。 「お前はどうだ?」  今度は佐々木の方に向き直って訊いた。 「まあ、いいことでないのは確かだな。でも、集団で生きていく以上は仕方のないことじゃないかな。特に日本だと、むしろ歓迎しているような雰囲気もあるしね」 「日本がいじめを歓迎しているってことはないんじゃない?」  由利は佐々木に訊いた。 「まあ、日本がっていうほど他の国のことは知らないけどさ。でも、テレビとかでいじめ反対みたいな特集をやっているけど、実際はいつまでたってもいじめはなくなってないよね。むしろいじめのやり方を教えているだけだって言う人もいるくらいだし、それにいじめ撲滅ってその程度しかないだろ。そういう意味では本気でいじめをなくそうとしているとは思えない」 「そうなのかな。いじめの現状を知るってことは無意味なことではないはずだよ」  由利が食い下がる。 「人によるんじゃない。由利ぐらい感受性が強かったらそうかもしれないけど、それを見たって何も感じない人だっているわけだから」 「そうだとしても、何もしないでほったらかしたって事態が良くなるとは思えないんだけど」 「そりゃそうだ。今だっていじめで苦しんでる人はたくさんいるんだ。このままほっといていいわけがない」  高屋が口を挟む。
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