二年1

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「ほっとく気がないんだったら法律で決めてしまえばいいんだ。本気でいじめをなくす気ならね。罪の重さを何か目に見える形で表さないと罪を自覚しないと思うんだ。海外なら犯罪になる国もあるらしいし、そういう誰にでも分かる形にしないといじめがなくなることはないと思う」 「海外だと犯罪になるのか?」  高屋は聞いたことがなかったので驚いた。  佐々木は記憶をたどるように遠くを見て話し始めた。 「前にテレビで見たんだけど、確かフランス刑法には『モラル・ハラスメント』っていうのが制定されてて、職場でのいじめを撲滅しようという流れがあるって言ってたよ。それで今ではその流れはヨーロッパ各国に広がっているらしいんだ。いじめは仕事効率が悪くなるからいじめのない職場こそ理想的だって誰かが言って始まったことなんだって」 「結局は、良心に訴えかけるんじゃなく、損得勘定になるんだね」  由利が少し残念そうな声で言った。 「まあ、それは仕方ないんじゃない? 人間は基本的に損得勘定で動いてるんだから。もし良心が世界を動かしてるなら、今頃、みんなが平和に暮らせているよ。でも、さっきから他人事みたいに言ってるけど、俺たちもいじめと無関係ってこともないと思うよ」
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