二年1

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「俺たちがいじめと無関係じゃないってどういうことだよ? 俺はいじめなんてしてないだろ」  高屋は急に何を訳の分からないことを言い出すのだと少し腹が立った。   「海外で活躍する日本人が一番苦労するのは人種差別だって聞いたことがあるだろ。俺たちは国によっては差別の対象になりえるんだ。それで今度は逆に、日本でアジア人とか南米の人とかが事件を起こした時、俺たちは、『だからあいつらは何を考えてるか分からないって言ったじゃないか』なんて言ってしまう。ということはつまり、誰しも、自分の意識の中に自然と序列が作られていて、それがいじめの引き金になったりすることもあるんじゃないかってこと」 「そう言われてみればそうかも。確かに、同じような事件でも、日本人が起こした場合と、外国の人が起こした場合ではかなり印象が違ってくるよね」  由利は納得したようだ。 「もっと身近なことで言えば、俺たちみたいな進学校に通ってる生徒とそうではない学校に通ってる生徒じゃ、コンビニとかの店員の態度も明らかに違ったりするしね。俺の制服を見るだけで『こいつがまさか万引きすることはないだろう』って全く注意を払われないけど、学校によってはしつこいほどに監視してるだろ。あれじゃ、客も寄り付かなくなっちゃうよ」
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