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「分かった、もういい。俺の聞き方が悪かった」
理屈を語り出すと佐々木に勝てるはずもない。
持っている知識の量が違うのだ。
始めから核心を突いた話をすれば良かった。
「じゃあ、今、お前の目の前でいじめが行われていたらどうする?」
佐々木は少し考えている。
高屋の質問の意図を探っているのだろう。
「俺はそれを止めに入るほどの正義感は持ち合わせていないよ。嫌なことは見て見ぬ振りが現代人の正しいあり方だ」
「何だよ。それじゃ、お前は言ってることとやってることが正反対じゃないか」
考える間があったことからそう言われるという予感はあった。
だけど納得出来ないこともあった。
「お前、よく言ってるよな。自分の行動に考えも責任もない奴が嫌いだって。いじめなんてその象徴じゃないか」
この言葉は佐々木がよく口にしている。
彼は何よりもマナー違反と軽犯罪が嫌いだった。
そういうことにこそ極刑を適応するべきだとまで言っていた。
お金がなくて自分の家族を守るために強盗するのはまだ分かるが、自分の小遣い欲しさにカツアゲをするのは許せない。
考えに考え抜いて、その結論として及んだ行為は評価出来るが、短絡的に及ぶ行為が嫌いなのだ。
だからこそ、あのひったくりを捕まえたらしい。
少し偏った考え方な気もするが何となく共感出来ないこともない。
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