二年1

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「分かった、もういい。俺の聞き方が悪かった」  理屈を語り出すと佐々木に勝てるはずもない。  持っている知識の量が違うのだ。  始めから核心を突いた話をすれば良かった。 「じゃあ、今、お前の目の前でいじめが行われていたらどうする?」  佐々木は少し考えている。  高屋の質問の意図を探っているのだろう。 「俺はそれを止めに入るほどの正義感は持ち合わせていないよ。嫌なことは見て見ぬ振りが現代人の正しいあり方だ」 「何だよ。それじゃ、お前は言ってることとやってることが正反対じゃないか」  考える間があったことからそう言われるという予感はあった。  だけど納得出来ないこともあった。 「お前、よく言ってるよな。自分の行動に考えも責任もない奴が嫌いだって。いじめなんてその象徴じゃないか」  この言葉は佐々木がよく口にしている。  彼は何よりもマナー違反と軽犯罪が嫌いだった。  そういうことにこそ極刑を適応するべきだとまで言っていた。  お金がなくて自分の家族を守るために強盗するのはまだ分かるが、自分の小遣い欲しさにカツアゲをするのは許せない。  考えに考え抜いて、その結論として及んだ行為は評価出来るが、短絡的に及ぶ行為が嫌いなのだ。  だからこそ、あのひったくりを捕まえたらしい。  少し偏った考え方な気もするが何となく共感出来ないこともない。
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