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そんな立派なことを言っているのだから当然いじめは止めなくてはいけない。
しかし、今の佐々木は止める気はないようだった。それが腹立たしい。
「そんな人間が嫌いなのは今でも変わらないよ。だけど、いじめを止めに入るのはこっちのリスクが大きい。わざわざ自分を犠牲にしてまで止めたいとは思わないよ」
「それよりもどこかでいじめがあるの? 私、見たことないけど」
由利が訊いた。
これを言えば佐々木は付いて来てくれるだろうか。
高屋は少し悩んだが言うことにした。
「実は、三年でいじめが起きているらしいんだ。今日、三年の先輩に聞いた。それを聞いて、ほっとくわけにはいかないだろ」
「ちょっと待て。いじめの噂なんて今まで何回かあっただろ。何で今回だけ助けに行かないといけないんだ?」
「今までのは噂だろうが。今回ははっきりといじめがあるって聞いたんだ。今までとは全く違う」
「変わらないだろ。聞いた話を噂って言うんじゃないのか」
佐々木が馬鹿にしたような口調で言ってきた。
「それだけなの? いじめを止めたい理由って?」
由利が訊いてきた。
「そうだよ。そこにいじめがあるから止めに行く。理由はそれだけで十分だろ」
高屋は今はまだ本当の理由を言いたくはなかった。
佐々木が観察するように眺めてくる。
迷っているのだろう。そして一つ息を吐きだしてから言った。
「分かったよ。お前がいじめを止めに行くって言うなら、俺が手伝うよ」
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