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高屋は何かを隠している。
このいじめにあいつがどう関わっているのだろう。
いじめを止めれば答えが出るのだろうか。
翌日、佐々木たちは体育館の前にいた。
誰もいない体育館は、人を吸い寄せるようでも、寄せ付けないようにも思えて、不思議な空気を纏っていた。
まるで巨大な箱が呼吸しているみたいだった。
「なあ、本当に行くのか?」
佐々木は高屋に訊いた。
現実を目の前にすると足が止まったのだ。
わざわざ、見ず知らずの人を助けるメリットが思い浮かばない。
「昨日はやる気満々だったのに、どうしたんだよ?」
高屋が不安そうな顔でこっちを見てきた。
彼としてもここで仲間がいなくなるのは心許ないみたいだ。
その様子を見ると、やっぱり一人で行ってきてくれ、とは言えないので、仕方なく佐々木は、「じゃあ、行くか」と言った。
二人で体育館に足を踏み入れた。
七月だというのに冷たい空気で満ちていた。
もちろんそれは七月なので物理的な温度ではなく、何か目に見えないものから発せられた佐々木たちにしか感じられない温度だ。
入り口の右側に体育教官室があるが、昼休みには誰もいない。
昼に部活で使うこともなく、学校にいるほとんどの人は昼ごはんを食べているので、金を巻き上げるには格好の場所と言えた。
よくもまあこんなところを探してくるものだと佐々木は感心する。
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