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体育教官室の正面に二階へと続く階段がある。
佐々木たちは出来るだけ音を立てないように階段へと向かった。
当然のことながらその行為自体に意味がないことは分かっていた。
どうせ相手と対峙することになるのだから、自分たちの存在がばれようが構わないはずだ。
それでも声を出すのも憚られるぐらい空気が張り詰めていた。
佐々木は階段に足をかけた。
高屋が一段上を歩いている。
二人で足並みを揃えて、ゆっくりと一段一段上って行く。
踊り場に着いた時、声が聞こえた。
何を言っているかははっきりとは聞き取れないが、下品な笑い声が混じっていた。
高屋と顔を見合わせた。
ここに奴らがいる。
高屋の顔がそう言っていた。
しかし高屋の気を引き締めた顔とは違い、佐々木はこの時、内心がっかりしていた。
まだ、もしここで何も行われていなければ、こんな面倒なことをせずに済むと期待していたのだと気付いた。
二階までたどり着くと、今度ははっきりと声が聞こえた。
今、死角になっているあの角の向こうにいるのだ。
いよいよかと思い、歩みを緩めることなく、角を曲がった。
薄暗い更衣室前には五人の男がいた。
一人を四人で囲んでいるのだ。
誰が見ても誰がいじめられているのか分かる構図だった。
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