二年2

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 体育教官室の正面に二階へと続く階段がある。  佐々木たちは出来るだけ音を立てないように階段へと向かった。  当然のことながらその行為自体に意味がないことは分かっていた。  どうせ相手と対峙することになるのだから、自分たちの存在がばれようが構わないはずだ。  それでも声を出すのも憚られるぐらい空気が張り詰めていた。  佐々木は階段に足をかけた。  高屋が一段上を歩いている。  二人で足並みを揃えて、ゆっくりと一段一段上って行く。  踊り場に着いた時、声が聞こえた。  何を言っているかははっきりとは聞き取れないが、下品な笑い声が混じっていた。  高屋と顔を見合わせた。  ここに奴らがいる。  高屋の顔がそう言っていた。  しかし高屋の気を引き締めた顔とは違い、佐々木はこの時、内心がっかりしていた。  まだ、もしここで何も行われていなければ、こんな面倒なことをせずに済むと期待していたのだと気付いた。  二階までたどり着くと、今度ははっきりと声が聞こえた。  今、死角になっているあの角の向こうにいるのだ。  いよいよかと思い、歩みを緩めることなく、角を曲がった。  薄暗い更衣室前には五人の男がいた。  一人を四人で囲んでいるのだ。  誰が見ても誰がいじめられているのか分かる構図だった。
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