二年2

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「いい加減にしろよ」  背の高い男が佐々木の肩に手をかけた。  そしてその手を力強く引き、佐々木といじめられっ子を引き離した。  佐々木は態勢を崩した。  「何するんだ!」  高屋が大声を出した。  そのまま背の高い男に突っかかって行きそうだったので、佐々木が手で制した。 「もういい」 「もういいってこのまま引き下がるのかよ?」  高屋が怒鳴りつけてくる。 「引き下がるわけないだろ。口で言っても分からないようなら、実力行使しかないよな」  高屋に笑いかけながら言った。 「え?」 「昨日はそう言ってただろ。実力行使になるかもって」  そう言って佐々木はポケットを探る。  そしてカッターナイフを取り出した。  驚いて全員が一瞬言葉に詰まった。  あたりに緊張が走る。 「ちょっと、それはまずいって。本気かよ」  高屋が言った。 「本気だよ」  佐々木はカッターナイフの刃を出す。  カチカチカチっという音が廊下に響く。  そこにいる全員が顔を見合せる。  明らかに不安の色が顔に浮かんでいた。 「どうせ脅しだよ。そんなもん見せたって俺はビビらねえよ」  背の高い男はそう言ったが、その言葉とは裏腹に顔にはやはり不安の色が滲み出ていた。 「俺が脅しでこんなことするわけないだろ」  佐々木はそう言って自分の左手首を目の高さまで持ってきた。
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