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「いつの間にそんなの仕掛けたんだよ?」
高屋はまだ不満げだった。
「ここに来る前にトイレに行っただろ。あの時だよ」
基本的な仕掛けは家で済ませておいたので手首に貼り付けるだけだった。
「それなら、始めから俺に教えておいてくれよ。俺までビビってしまったじゃねえか」
「お前の下手な演技で見抜かれたら台無しになるからな」
「だいたい、カッターで脅すだけなら、そんなのいらねえだろ」
「でもこうした方が迫力があっただろ」
「どうせ俺が慌ててるのを見て優越感に浸っていたんだろ。お前のそういうところは昔から変わらないな」
高屋が精いっぱいの嫌味を言ってきた。
昔からって言うほど、長い付き合いでもないだろ、と思ったが、こんな無駄話をいつまでもしている場合ではないと気付いたので、佐々木は何も言わずいじめられっ子の方に視線を投げた。
それにつられて高屋もそっちを見た。
佐々木たちといじめられっ子の視線があった。
が、すぐに視線を逸らされた。
お前、何か用があったんじゃないのか? と高屋の方へ視線を向けた。
高屋は頷いた。佐々木のメッセージは伝わったようだ。
高屋は意を決していじめられっ子に話しかけようとした。
「あの……」
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