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高屋は呆気にとられてしまって、動くことすら出来ないでいるみたいだった。
状況が呑み込めていないのだ。
「知り合いだったんだろ?」
このままではらちが明かないと思い、佐々木が高屋の背中に声をかけた。
「あ、ああ。リトルリーグでチームメイトだったんだ」
高屋は佐々木の声で我に返った。
もうこれ以上隠す必要がないと思って、全て話す気になったみたいだった。
「でも、何であんな反応なんだよ」
わずかに声が震えていた。
その疑問は佐々木には明らかだった。
「お前らがどういう関係かは知らないけど、普通、年下に助けられるなんてこれ以上ない屈辱だろ。しかも、よりによって昔の後輩に助けられるなんて」
「そうなのか……」
高屋は力なく呟く。
「そりゃそうだって。で、お前らはどういう関係だったんだ? 別に言いたくなかったら言わなくてもいいけど、わざわざここまでついて来てやったんだ。教えてくれてもいいだろ。ただの昔のチームメイトってだけじゃないんだろ」
高屋はまだこっちに振り返ろうとしない。
「昔は憧れと言うか、家が近かったから毎日、一緒に野球してたんだ。だから、俺は河合君に野球を教えてもらったようなものなんだ」
あのいじめられっ子は河合と言うらしい。
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