二年2

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「だったら尚更だろ」  河合といういじめられっ子からしたら、昔の憧れのイメージを崩したくはなかったのだろう。  よりによっていじめられている現場を見られて、しかも助けてもらったのではそのイメージは原型を留めることが出来ないほど崩れ去ってしまう。 「あの人、昔、ピッチャーでさ、俺が四年生の時引っ越したんだけど、たまたま学校で見かけたんだ。最初は嬉しかった。もしかしたら、バッテリー組めるんじゃないかって」  高屋の声はもうはっきりと分かるほどに震えていた。 「その時は話しかけなかったのか?」 「もう七年も会ってなくて、確信がなかった。だから、昨日先輩に訊いてみた。河合君って知ってますかって。そしたら、ああ、あのいじめられっ子か、って返事が返ってきた」  高屋はむせび泣いている。  言葉が詰る。 「だから……、助けたかったんだよ」 「気持ちは分からないこともないけどな」  分からないこともないけど、自分だったら間違いなくこんなことはしなかっただろう。
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